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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】希土類添加半導体のエネルギー移動機構を利用したラチェット型中間バンド太陽電池の光制御に世界ではじめて成功! ~脱炭素に向けた次世代エネルギー変換技術に新たな道~

2021年03月01日

電気通信大学大学院情報理工学研究科基盤理工学専攻の曽我部東馬准教授、山口浩一教授らの国際共同研究グループは、希土類添加中間バンド太陽電池において、希土類発光中心のエネルギー移動機構に由来するラチェット中間バンド効果を介した2段階光吸収に成功し、脱炭素に向けた次世代エネルギー変換技術に新たな道を開拓しました。

中間バンド太陽電池は63.2%の理論変換効率を有し、量子ドット超格子、中間バンド太陽電池をはじめとして盛んに研究されています。一方、現在の量子ドット超格子中間バンド太陽電池の最高変換効率は29.6%にとどまり、理論変換効率より遥かに低い値にとどまっています。中間バンド太陽電池の高効率化を阻害するのは、中間バンドに励起された光キャリアのライフタイム(寿命)が短いことが最大の要因とされています。中間バンドキャリアを長寿命化する主たる手法は、光キャリアである電子と正孔を空間的に分離する原理に基づいています。その中で近年、理論上、正孔と電子を空間的に最も分離できる長寿命ラチェット型中間バンドの研究が注目されています。ただし、これまでの報告は原理検証にとどまり、長寿命ラチェットバンドは実現されていませんでした。本研究成果はミリ秒ライフタイムを持つ希土類発光中心に着目し、広く知られている希土類発光中心に特有のエネルギー移動機構を制御した長寿命ラチェットバンドを実現し、その2段階光吸収の観測に成功しました。

本来、希土類発光中心におけるエネルギー移動機構は温度消光や光消光などで発光に不利な働きをするため抑制の対象ですが、本研究はそれに反して'不利'な働きを'有利'に活用し、希土類発光に新たな設計指針を与えることが期待されます。また希土類発光中心を経由する光アップコンバージョン励起効果についても、本研究結果から第1・2段階の光吸収を自在にチューニング・制御できるため、従来のアップコンバージョンデバイスの開発を大きく補完する役割が期待されます。

今回の研究成果は気相法の結晶成長で作製したデバイスを使用しましたが、今後は低コストの塗布型ペロブスカイトや液相法量子ドット太陽電池の応用に注力し、開発を進めていきます。

本研究成果は2021年3月1日に、英国Springer Nature社のオープンアクセス誌「Communications Physics」にオンライン掲載されました。

さまざまなタイプのIBSCの動作原理とエネルギー移動機構モデル

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