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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】「触媒通念を超える新型アンモ酸化触媒の開発に成功」 ―通念に縛られない元素選択と触媒開発指針を提供―

2021年04月30日

岩澤康裕特任教授(燃料電池イノベーション研究センター)らの研究チームは、セシウムイオンを用いて優れたアンモ酸化触媒作用を示す「Cs+シングルサイト/Yゼオライト触媒」を新たに開発しました。

セシウムイオン(Cs+)自体は不活性なものですが、本研究ではY型ゼオライトの細孔内にCs+イオンを固定化することで、非常に優れたアンモ酸化触媒作用を示す新たな触媒、「Cs+シングルサイト/Yゼオライト触媒」を開発しました。
この開発は科学的発見であることに加え、イオン交換法によるCs+イオンの固定化が容易であることから、工業的にも大きな利点があるといえます。

これまでの触媒開発の通念として、酸化還元性能を持たない酸塩基触媒は、それ自身が酸化還元触媒作用を効率的に進めることはできないと言われてきました。しかし、本研究では特にDFT理論計算による検討から、従来不活性とされていたCs+イオンが、適切なゼオライトの細孔内に固定化されることで、酸化活性を持つCs+シングルサイト触媒に転換することを明らかにしました。

「Cs+シングルサイト/Yゼオライト触媒」は、トルエンなどのメチル(CH3基のC-H結合をC-N結合に変換するアンモ酸化反応(ニトリル合成反応)に高い活性を示します。このような反応は、高性能ラバー、高分子、分子エレクトロニクス、医薬品、農薬などの合成に使われるニトリル化合物を合成するための重要な工業プロセスです。
また、トルエン以外にも芳香族炭化水素のニトリル化にも高い触媒活性を示すことが見出されました。

この研究により、通念や常識に縛られない発想による触媒設計開発の可能性を広げ、触媒科学技術に新たな展開を切り拓きました。

本研究は、アメリカ化学会誌「ACS Catalysis」に掲載予定です。
論文タイトル "Unprecedented Catalysis of Cs+ Single Sites Confined in Y Zeolite Pores for Selective Csp3-H Bond Ammoxidation: Transformation of Inactive Cs+ Ions with a Noble Gas Electronic Structure to Active Cs+ Single Sites"

Cs+イオンとCs+シングルサイト/Y触媒のモデル構造図

Cs+イオンとCs+シングルサイト/Y触媒のモデル構造図

詳細はPDFをご覧ください。