【ニュースリリース】溺水をセンサで検知して自動通報 ~電通大がライフセーバーの飯沼誠司氏と実証実験~
2021年10月08日
国立大学法人 電気通信大学の研究チームは、令和3年10月15日(金)にダイビングプール・オーケーマリンプロ(東京都練馬区)において、腕時計型の小型センサによって溺水(おぼれること)の兆候を早期に検知する全く新しいデバイスの実証実験を、ライフセーバーの飯沼誠司氏らと共に実証します。
この小型センサは電気通信大学が独自に開発したもので、利用者のリストバンドやロッカーキーとして装着することができる完全防水型の試作機です。センサは3D加速度と水圧を測定でき、溺水者に特徴的な挙動である溺水反応のデータを収集できます。将来的には溺水を早期に自動検知し、ライフガードや管理者へ通知するシステムを開発することを目的としています。
実証実験ではライフセーバーに小型センサを装着した上で、実際に溺水するまでの典型的な事例である「遊泳中に足が届かなくなる」「離岸流に流される」「遊具から脱落する」等の動きをリアルに再現し、そこでの3D加速度・水圧データを収集します。また後日、非溺水時のビッグデータも一般被験者から収集することで、最終的には機械学習等による検出ロジックを開発する予定です。
この実証実験は、電気通信大学の研究チームが中心となり、ライフセーバーの飯沼誠司氏らの協力のもと行います。なお本研究は公益財団法人I-O DATA(アイ・オー・データ)財団の支援を受けています。
【背景】
日本は河川や海岸が多いこともあり、世界でも溺水の多い国といえます。国内の水難事故死者数は年間250名前後とされ(警視庁R2)、人口10万人あたりの水難事故による死者数は主要先進10カ国で1位(WHO, Disease burden and mortality estimates, 2016)となっています。こうした溺水による死亡事故を防ぐためには何よりも早期発見が重要ですが、現在は監視員の眼と経験に頼っているのが現状となっています。例えば一昨年には、ライフジャケットを着用した児童が死角となる水上遊具の底面で溺死した痛ましいプール事故が起きましたが、このとき行方不明の相談を受けた監視員が捜索・発見するまでに1時間以上を要しました。このことは目視やカメラによる事故検出の限界を示唆しています。無資格者やアルバイトが監視員として浜などに立つケースも多く、また目視には限界もあるため事故が絶えません。
【実証実験の詳細】
■実験日時 令和3年10月15日(金) 13:00~
■実験場所 オーケーマリンプロ(東京都練馬区豊玉北4丁目30−8)
■実験実施者
・大河原一憲准教授(共通教育部)
・石垣陽特任准教授(情報学専攻)
・小西長門(情報学専攻博士前期1年 大河原研究室所属)
■実験協力者
・飯沼誠司(ライフセーバー)
【期待される効果と今後の予定】
広く海に囲まれている日本の水辺、豊富な海、河川、プール(全国15万カ所)などにおいて、これまで抜本的対策が難しかった溺水の早期検出に向け、日本の優れたセンシングやAI技術を組み合わせた製品の実用化が期待できます。本研究はSDGsの達成目標6(水・衛生)、9(イノベーション)、11(都市)の観点からも重要な研究といえます。また特に本邦では、浴槽で高齢者が亡くなる溺水事案も多く発生しており、将来的には介護現場等への応用展開も期待できます。
電通大で独自に開発した小型センサ
詳細は下記PDFでご確認ください。