【ニュースリリース】新型コロナ患者移送用タクシーでマイクロ飛沫の広がりを可視化 ~電通大と境交通が改造型ジャパンタクシーで実証実験~
2021年10月11日
国立大学法人 電気通信大学を中心とした研究チームは、令和3年10月17日(日)に、新型コロナ患者を移送するために改良したトヨタ自動車製「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」車両を用いて、特殊スモークによるマイクロ飛沫の広がりを可視化する実験を、地元のタクシー会社境交通(チェッカーキャブ無線グループ)と共同で行います。合わせて二酸化炭素(CO2)ガスによる換気回数の測定や、CDC(米疾病予防管理センター)の定める陰圧室のガイドラインを満たしていることも検証します。その後、この車両は10月18日(月)より、実際に新型コロナ陽性患者の移送に使われる予定です。
実験ではフォグマシンにより疑似的なマイクロ飛沫を発生させて気流の流れを可視化するとともに、車内にCO2ガスを充満させた上で、電気通信大学が開発した小型CO2センサにより換気回数を分析します。さらに熱流体シミュレーションにより車内の気流も分析します。
これまで同研究チームでは、COVID-19の感染症クラスターが実際に発生した病院・高齢者施設・事業所・学校など5ヶ所に立ち入り調査し、熱流体シミュレーションやCO2濃度のモニタリングにより原因究明と再発防止のための改善を行ってきました。今回はこれら建物でのクラスター対策の知見を活かし、実際に患者が移送される車両について徹底的な調査を行います。
【背景】
新型コロナウイルスの感染拡大予防のためは、「接触」「飛沫」「マイクロ飛沫」という3つの感染経路毎に、複数の対策を講じることが重要です。昨今、室内の二酸化炭素(CO2)の濃度を計測・可視化することにより室内の換気状態を良好な状態に保ち、たとえ空気中に「マイクロ飛沫」が存在したとしても、これらを逸早く排出させる手法が注目されています。
電気通信大学はこれまで、調布市のワクチン集団接種会場、調布市役所庁舎、調布駅前商店街、入学式、ライブ会場でのCO2濃度を可視化し、換気のための行動変容を支援してきました。また、クラスターが実際に発生した病院・高齢者施設・事業所・学校など5ヶ所に立ち入り調査し、特に換気やマイクロ飛沫の広がりの観点から、原因究明と再発防止のための改善を行ってきました。
【実証実験の詳細】
■実験日時 令和3年10月17日(日)10:00~
■実験場所 電気通信大学(東京都調布市調布ケ丘1丁目5−1)
■実験実施者
・石垣陽特任准教授(情報学専攻)
・横川慎二教授(i-パワードエネルギー・システム研究センター長)
・喜多村紘子准教授(産業医科大学 産業医実務研修センター)
・川内雄登(横川慎二研究室 学生)
・乾智葉(田中健次研究室 学生)
・根本克己(境交通株式会社 代表取締役)
【期待される効果と今後の予定】
新型コロナウイルスの変異種や第5波以降の対策が求められる中、多人数が集まる場所では「換気の悪い密閉空間」を避けることが重要とされています。今回の取組みを契機として、飲食店・事業所・ライブハウスのみならず、移動する車内での安全安心を支えるため、CO2の測定・可視化が広まり、適切な対策と行動変容(ナッジ)に繋がることが期待されます。
電気通信大学では今後も引き続き、センサやシミュレーション技術を駆使し、目に見えない換気の「可視化」と、オーナー自らが実践でき低コストな換気設備の改善による換気能力の向上とノウハウの普及・共有のために、継続的に実証実験を行う予定です。
実験イメージ
詳細は下記PDFをご覧ください。