【ニュースリリース】波長2µm帯固体レーザーから世界最短のパルス発生に成功
2021年12月03日
ポイント
- *波長2µm帯ツリウム添加固体レーザーから最短パルスを発生させた
- *複合利得媒質を導入し、レーザーの利得帯域を人工的に制御可能に
概要
電気通信大学レーザー新世代研究センター、および脳・医工学研究センターの戸倉川正樹准教授らは、ドイツの結晶成長研究所(IKZ)などの研究チームと共同で、波長2µm帯のツリウムを添加した超短パルス固体レーザー[1]において、世界最短となる41フェムト秒(1fs=10-15秒)のパルス発生に成功しました。
レーザー共振器内で異なる種類の利得媒質[2]を同時に使用する「複合利得媒質」という新手法を用いることで、レーザー発振に使う利得帯域を拡大させる人工的な制御が可能になりました。これにより、現在までに報告されている波長2µm帯のツリウム添加固体レーザーの中で最短となる超短パルスを発生させることができました。
複合利得媒質を使うことによって、共振器内の非線形光学や既存のレーザー増幅器、単一のレーザー媒質の限界を超えた新しいレーザーの開発につながると期待されます。
成果はアメリカ光学会発行の「Optics Express」に掲載されました。
今後の期待
複合利得媒質技術は、新規のレーザー結晶を用いることなく、レーザーの利得帯域の制御を可能にします。この技術を応用すれば、共振器内の非線形光学や既存のレーザー増幅器、単一レーザー媒質の限界を超えた新しいレーザーの開発につながると期待されます。
Tm添加複合利得媒質による利得帯域の広帯域化
論文情報
- 雑誌名:「Optics Express」
- 論文タイトル:Sub-6 optical-cycle Kerr-lens mode-locked Tm:Lu2O3 and Tm:Sc2O3 combined gain media laser at 2.1 μm
- 著者:Anna Suzuki, Christian Kränkel, Masaki Tokurakawa
- DOI番号:10.1364/OE.428063
用語説明
- [1]超短パルス固体レーザー:ピコ秒(1ps=10-12秒)以下の非常に短い時間幅を持つパルスレーザー。カメラのフラッシュのように使うことによって、超高速現象の観測に用いられている。また時間的にエネルギーが圧縮されており、高い電界強度を得られることから、非線形光学現象の実現にも使用される
- [2]利得媒質:レーザー光を増幅するために用いられ、固体レーザーでは母材となる固体媒質に希土類原子や遷移金属原子が添加された利得媒質が用いられる。母材に依存した各種原子固有の電子軌道間のエネルギー差に相当する光を増幅し、その利得形状、幅は各利得媒質固有となる
詳細は下記PDFをご覧ください。