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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】私有地や車両へ手軽に取付、重さ約700gの放射線モニタリングポストを開発 ~特定復興再生拠点区域でのモニタリングを開始~

2022年01月14日

田中健次教授・石垣陽特任准教授(情報学専攻)を中心とする研究チームは、誰でも手軽に設置できる「私設モニタリングポスト」を開発し、福島県内での放射線モニタリング試験を開始しました。今後は福島県内の子供の居場所(託児所、フリースクール、遊び場)や、2022年春頃までの避難指示解除を目指す「特定復興再生拠点区域」に重点的に設置する他、同県大熊町の生活循環バスなどの移動体を活用した面的測定の実証実験も行います。
この私設モニタリングポストは慶應義塾大学 理工学部 物理情報学科の松本 佳宣 研究室と共同で開発したもので、小型放射線センサ「ポケットガイガー」に小型のソーラーパネルと4G通信モジュールが組み合わされています。720gとタブレット端末並みに軽量なことから、柱やフェンス等に誰でも簡単に取り付けられます。また基本的にメンテナンス不要で、ソーラー駆動のみで動作し、測定値は4G無線回線を通じてクラウドに記録されます。スマホから放射線量や除染の状況も確認することができます。
福島県内では既に原子力規制員会が公的なモニタリングポスト(リアルタイム線量測定システム)を約3,000カ所設置しています。しかし生活圏(自宅・私有地や子供の居場所、外遊び場、除染が進んでいない森林など)をくまなくモニタリングするには至っていません。私設モニタリングポストは小型軽量で、部品代も2.5万円程度であるため、より多くの地域にモニタリングポストを行き渡らせる事が期待できます。

背景

本学を中心とした研究チームは、福島原発事故後の線量計不足に対応するため、世界初のスマホ接続型放射線センサ「ポケットガイガー」を3か月で開発し、クラウドファンディングや産学連携を経て社会実装してきました(参考リンク1)。その後、線量計の不足は解消したものの、事故から10年たった今でも放射線に対する不安は払しょくされていません。
福島県内の一般市民1,500名(93%が女性、30代の子育て世代が中心)にアンケート調査を行ったところ、私設モニタリングポストについて過半数が必要性を感じており、特に「屋外の子供の居場所」や「自宅」でのモニタリングポストを希望される方が多いことがわかりました。またモニタリングポストの測定値については、Web・メールや紙媒体といった旧来のメディアのみならず、TwitterやLINE等のSNSでの情報発信を望んでいることもわかりました。
そこで研究チームでは、このような生活圏での放射線モニタリングを充実させるため、今回の私設モニタリングポストを開発しました。既に大熊町の帰還困難区域内に3台の私設モニタリングポストを試験的に設置し、耐久性や精度試験を行っています。今後はさらに協力者を募り、託児施設や、来年度から一部帰還が見込まれている特定復興再生拠点区域などでの実証実験を行う予定です。

研究内容

本研究は、環境省の令和3年度 放射線健康管理・健康不安対策事業(放射線の健康影響に係る研究調査事業)として本学が採択された事業「セカンドプレイスでの放射線リスクコミュニケーションの実現」の一環として行われているものです。
本年度は事業1年目となり、私設モニタリングポストの試作とニーズ調査を行いました。2年目以降に20台以上を福島県内に導入し、3年目には地域住民の方と共同で、私設モニタリングポストの測定値を見ながらリスクコミュニケーションの議論ワークショップを行う予定です。

開発した私設モニタリングポスト

開発した私設モニタリングポスト

設置例(大熊町)

設置例(大熊町)

参考リンク

詳細はPDFでご確認ください。