【ニュースリリース】超音波ガイド下治療のための畳み込みニューラルネットワークを用いた音響陰影像領域の補完手法を開発
2022年01月26日
ポイント
*欠損領域の画像を補完した合成画像を生成する手法を提案
*患部の常時モニタリングが可能に
*医療のデジタル化(医デジ化)に貢献する
概要
小泉憲裕准教授、西山悠准教授、修士課程1年の松山桃子氏(機械知能システム学専攻)らは、局所的な超音波ガイド下治療[1]において、音響ノイズの陰に隠れた患部の合成画像を生成する手法を開発しました。
一般に、音響ノイズの少ない超音波画像は、局所超音波ガイド下治療中の臓器モニタリングに不可欠です。しかしながら、患部が肋骨の下にある場合、骨などの硬組織からの音の反射によって音響陰影[2]が発生し、この領域の情報が欠落した状態で画像が出力されます。
この問題を解決するため、今回、畳み込みニューラルネットワーク[3]を用いて欠損した音響陰影領域を補完した合成画像を生成する手法を開発しました。これによって、音響ノイズの陰に隠れて見えたり見えなかったりする患部を常時モニタリングすることが可能になり、超音波ガイド下治療における臓器の画像追跡の精度を向上できます。小泉准教授らは「医療のデジタル化(医デジ化)」を推進しており、医療診断・治療技能のデジタル化を進める技術になると期待されます。
成果は、医療用AI・ロボティクス分野のトップジャーナルである「International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery(IJCARS)」誌に掲載されました。本研究は、横浜市立大学附属市民総合医療センターの沼田和司診療教授、東京大学医学部附属病院の月原弘之特任助教、日本大学の松本直樹医局長、株式会社大林製作所(本社:東京都文京区、代表取締役社長:飯島秀幸)らとの一連の共同研究プロジェクトの成果です。
今後の期待
提案手法の有効性をファントム実験によって示しました。この手法を適用することで、音響ノイズの陰に隠れた患部も常時モニタリングできるようになり、超音波ガイド下治療における臓器の画像追跡の精度が向上できます。「医デジ化」に貢献する技術として、実用化が期待されます。今後は実際の臓器においても有効性を検証していく予定です。
音響陰影領域を補完する合成画像の生成フロー
(論文情報)
雑誌名:「International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (IJCARS)」 2022 Jan;17(1):107-119.
論文タイトル:A novel complementation method of an acoustic shadow region utilizing a convolutional neural network for ultrasound-guided therapy
著者:Momoko Matsuyama, Norihiro Koizumi, Akihide Otsuka, Kento Kobayashi, Shiho Yagasaki, Yusuke Watanabe, Jiayi Zhou, Yu Nishiyama, Naoki Matsumoto, Hiroyuki Tsukihara, Kazushi Numata
DOI番号:10.1007/s11548-021-02525-8
(外部資金情報)
令和2~5年度 文部科学省 科学研究費補助金 (20H02113) 基盤研究(B), "医療のデジタル化を加速・推進するロボティック超音波診断・治療基盤システムの構築"
(用語説明)
[1]超音波ガイド下治療:超音波診断画像でモニタリングしながら治療を行なうこと
[2]音響陰影:結石やろっ骨などの硬い組織に超音波が反射することで、その後方にできる陰影
[3]畳み込みニューラルネットワーク:人間の視覚神経を参考にしたアルゴリズムであり、医用画像中の臓器やがんなどを視覚的に検出することができる
詳細はPDFでご確認ください。