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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】エネルギー最適化に向けたリスク評価型強化学習手法の開発に成功~不確実な電力需要や天候のもとでも効果的に運用可能~

2022年07月28日

ポイント

  • *エネルギー分野における「アンサンブル強化学習による最適化」の開発に成功
  • *不確実なエネルギー環境における「リスク評価型強化学習」の開発に世界ではじめて成功
  • *カーボンニュートラルに向けた「スマートグリッド」最適化によるエネルギー有効活用に大きな期待

概要

曽我部東馬准教授ら(i-パワードエネルギー・システム研究センター)の研究グループは、株式会社グリッドとの共同研究において、強化学習アルゴリズムにリスク評価技術とアンサンブル学習を適用することで不確実な環境におけるエネルギー最適化問題をより高い精度で解決できることを示しました。この成果はAIP(American Institute of Physics)発行の学術雑誌「Journal of Renewable and Sustainable Energy」にて掲載されました。

背景

クリーンエネルギーの普及に伴う電源の分散化に伴い、電力の利用状況を最適化し効率的な送配電を目指す「スマートグリッド」技術が注目を集めています。しかし天候や電力需要は予測が難しく、不確実な予測シナリオに対しても配電の制約を守る手法の確立が課題となっています。
これまでも強化学習を用いてエネルギー最適化を行う試みはありましたが、主に単一のネットワークを訓練するものでした。一方、機械学習分野では並行して訓練された複数のネットワークの出力から総合的に判断するアンサンブル学習が広く用いられています。強化学習とアンサンブル学習を組み合わせた「アンサンブル強化学習」は不確実な問題への効果が期待できるものの、基礎研究に留まっている状態でした。
今回の研究では、このアンサンブル強化学習をエネルギー分野の問題に応用することで、変わりやすい天候や未知の需要データに対しても、より制約の違反が少なく経済的な売買電の計画を作成できることを示しました。さらにその計画に対してリスクマネジメントの観点から分析を行なっています。
また、本研究の結果の波及効果の一つとして、不確実な環境でも機能するAIの開発に成功し、AIの最大の課題である「フレーム問題」を解決する糸口を示唆することができました。

今後の期待

これまで不確実な環境でも機能するAIをエネルギー分野に応用した研究は、国内外でも例がありませんでした。今回の研究結果は、カーボンニュートラルの実現に向けた「スマートグリッド」最適化によるエネルギーの有効活用への大きな足がかりとなることが期待されます。
曽我部研究室では今後もエネルギー問題の解決に向けて、リスクを考慮したAI最適化、不確実な環境における最適化の開発を進化させて参ります。

(論文情報)
タイトル:"Attention and Masking embedded Ensemble Reinforcement Learning for Smart Energy Optimization and Risk Evaluation under Uncertainties"
著者:Tomah Sogabe, Chih-Chieh Chen, Dinesh Bahadur Malla, Katsuyoshi Sakamoto
掲載誌:Journal of Renewable and Sustainable Energy,in press(2022)
公開日: 2022年6月20日
本誌リンク:新しいウィンドウが開きます https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0097344

(a)電力売却時の送電網状

(a)電力売却時の送電網

(b)電力購入時の送電網

(b)電力購入時の送電網

詳細はPDFでご確認ください。