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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】一度壊れて復活する電子の秩序配列 ――元素置換による量子性の出現――

2023年03月10日

ポイント

◆外部磁場により一度壊れた反強磁性が、さらに強い外部磁場で復活するという、通常とは異なる磁性体の開発に成功しました。
◆この振る舞いは、元素置換により出現した量子性に起因していることを示しました。
◆この現象は、古典的な磁石では起こりえず、新たな量子技術の開発につながることが期待されます。

磁場で一度壊れて更に強い磁場で復活する電子秩序

磁場で一度壊れて更に強い磁場で復活する電子秩序

概要

渡辺義人大学院生、有馬孝尚教授、徳永祐介准教授、橋本顕一郎准教授、芝内孝禎教授(東京大学大学院新領域創成科学研究科)らは、東京大学物性研究所、電気通信大学と共同で、通常とは異なる性質を持つ磁性体の開発に成功しました。通常、反強磁性秩序を持つ磁性体に外部磁場を印加すると、磁場強度がある値を超えたところで反強磁性秩序が壊れます。しかし、今回開発したコバルトを含む複合酸化物では、外部磁場によって一度壊れた反強磁性秩序が、さらに強い磁場で復活しました。さらに、この直観に反する磁性体の振る舞いが、コバルト原子の持つ微小な磁石が私たちの身の回りにある磁石とは異なる量子性という性質を持つことに起因していることを示しました。現在、量子性に基づくさまざまな物質機能が新しい情報処理素子などの観点から注目されています。本研究成果は、新たな量子技術の開発につながることが期待できます。
本研究成果は2023年3月10日(金)付けで、英国科学誌『Nature Communications』にオンライン掲載されました。

今後の展望

近年の高温超伝導や量子コンピュータへの高い関心からも分かるように量子的な性質が強く表れた物質は新奇な物性発現の宝庫です。本研究で用いた相互作用を弱める方法は他の量子的な物質の性質を探索するうえでの応用が可能であるため、量子的な物性の基本的な理解の進展や量子技術の発展への貢献が期待できます。また、本物質は理論的な合意が得られていない不規則性のある物質における量子的な現象の貴重な実験的検証の場を提供しています。今後、数値計算結果や、応力などの不規則性を伴わない制御方法で得られる実験結果などと比較していくことにより、量子的な現象の理解が深化することが期待できます。

発表者
東京大学 大学院新領域創成科学研究科
渡辺 義人(博士課程)
徳永 祐介(准教授)
有馬 孝尚(教授)
橋本 顕一郎(准教授)
芝内 孝禎(教授)
東京大学 物性研究所
徳永 将史(准教授)

電気通信大学大学院情報理工学研究科
池田 暁彦(助教)

論文情報
雑誌:Nature Communications
題名:Double dome structure of the Bose-Einstein Condensation in Diluted S=3/2 Quantum Magnet
著者:Y. Watanabe, A. Miyake, M. Gen, Y. Mizukami, K. Hashimoto, T. Shibauchi, A. Ikeda, M. Tokunaga, T. Kurumaji, Y. Tokunaga, T. Arima
DOI:10.1038/s41467-023-36725-4
URL(新しいウィンドウが開きます)https://www.nature.com/articles/s41467-023-36725-4

研究助成
本研究は科学研究費補助金基盤研究[19H01835]、および新学術領域研究「量子液晶の物性科学」(領域代表:芝内孝禎教授)[JP19H05824、 JP19H05826]などの助成を受けて行われました。

詳細はPDFでご確認ください。