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国立大学法人 電気通信大学

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お知らせ

【ニュースリリース】アクリルパネルやビニールシートがマイクロ飛沫感染の一因に ~クラスター発生地点での換気実験と熱流体シミュレーションから分析~

2021年05月31日

国立大学法人 電気通信大学(以下、本学)を中心とした横川 慎二 教授(本学 i-パワードエネルギー・システム研究センター)らの研究チームは、新型コロナウイルス感染症の対策として広く実施されているアクリルパネルやビニールシートによる空間遮蔽が空気を滞留させるため換気に悪影響を及ぼし、結果としてマイクロ飛沫感染の一因となる可能性があることを発見し、研究者にいち早く共有し広く意見を求めるため、医学分野のプレプリントサービス「medRxiv」(運営:コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)、医学系雑誌出版社 BMJ、米・イエール大学)に速報原稿を投稿しました。

この調査は本学に加え、産業医科大学、宮城県結核予防会の研究者によって、実際にクラスタ ーが発生した宮城県内の事務室を調査し、当時の換気状況を CO2ガスにより測定し、さらに熱流体シミュレーションによってマイクロ飛沫の挙動を分析したものです。

新型コロナウイルスの感染拡大予防のためは、「接触」「飛沫」「マイクロ飛沫」という 3つの感染経路毎に、複数の対策を講じることが重要です。昨今、室内の二酸化炭素(CO2)の濃度を計測・可視化することにより室内の換気状態を良好な状態に保ち、たとえ空気中に「マイクロ飛沫」が存在したとしても、これらをいち早く排出させる手法が注目されています。
本学はこれまで、調布駅前商店街との共同実証実験等、換気改善のための実証実験を行う中、宮城県内でマイクロ飛沫による空気感染が原因とみられるクラスターが発生したとの連絡を受け、本学を中心とする研究チームによる現地調査と分析が実現しました。

クラスターが発生した事務室では飛沫感染対策の一環として、向かい合った机の列を隔てるように、床面からの高さ 1.6mのビニールシートパーテーションが設置されていました。この遮蔽により空間が 5つの区画に分断されており、区画によっては換気回数が毎時 0.1回程度と非常に低くな っていたことが実験的に確かめられました。
改善策として、区画毎に窓開けを行い、さらに入口扉と廊下の先にある窓を開放することで、まんべんなく空気の流れ道をつくりだす事ができ、換気回数を毎時 10~28回まで向上できることがわかりました。

新型コロナウイルスの変異種や第4波への対策が求められる中、多人数が集まる場所ではマイクロ飛沫による空気感染リスクを低減するため、「換気の悪い密閉空間」を避けることが重要とされています。今回の結果は、飛沫感染対策のパーテーションの設置の際には、同時に区画毎に換気を確保することが重要であることを示しています。

今回の取組みを契機として本学は、クラスターが発生した宮城県内の事務室について管理者に適切な換気方法を指導すると共に、4個の CO2測定器を現地に導入しました。測定器はスタ ッフ全員が見やすい位置に設置されており、本学からリアルタイムでモニタリングすると共に、既定の値を超えた場合は担当者に通知されます。換気方法を改善して以降、現地では CO2が1,000ppmを上回ることはなく、適切な換気が維持されています。今後も公共空間での安全安心を支えるため、CO2の測定・可視化が広まり、適切な行動変容(ナッジ)に繋がることが期待されます。

熱流体シュミレーションによる解析結果(感染者の呼気がパーテーション区画内に広まる様子)

熱流体シュミレーションによる解析結果(感染者の呼気がパーテーション区画内に広まる様子)

詳細はPDFをご覧ください。