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UECで知る

2026年4月6日
村松 正和

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
ご家族、ご関係の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。
本日、博士前期課程および後期課程に入学された皆さんを、電気通信大学大学院の仲間としてお迎えできることを、大変うれしく思います。

今日ここにいる皆さんは、大学での学びを通して、それぞれに専門の基礎を身につけ、その上で、さらに先へ進もうという意志をもってこの場におられるのだと思います。
大学院への進学は、単に勉強を続けるということではありません。知識を学ぶ段階から、自ら問いを立て、深く考え、新しい知を生み出していく段階へ 進むことを意味しています。そうした道へ進むと決心された皆さんへ、心からエールを送ります。

今回、皆さんに三つのことをお伝えしたいと思います。

一つ目は、難しい問いから逃げないでほしい、ということです。

大学院では、正解が見えているテーマよりも、簡単には答えの出ない問題に取り組む場面が増えます。ときには、何か月も、はっきりした成果が見えないこともあるでしょう。友人が答えを見つけて国際発表の準備をしているのに、自分は答えの方向性も見えずに苦しんでいる、ということも決して珍しいことではありません。

しかし、課題に向き合い続けているその時間は、決して無駄ではありません。

うまくいかない理由を考え、方法を修正し、もう一度挑戦する。その繰り返しの中で、研究者として、また社会人としての本当の力が身についていきます。

たとえ学生時代に目に見える形で大きく花開かなかったとしても、そうした挑戦の中で得た本当の実力は、その後の人生を支える確かな土台になるはずです。どうか自分を信じて、粘り強く挑戦を重ねてください。

二つ目は、研究を自分の中だけに閉じ込めないでほしい、ということです。
研究は、一人で机に向かう時間を必要とします。しかし、それだけでは十分ではありません。自分の考えを言葉にし、人に伝え、問い返され、磨き直す。その過程を通して、研究はより深いものになっていきます。
ぜひ、研究室の中だけにとどまらず、他研究室、学会、共同研究、あるいは国際的な交流の場に、積極的に出ていってください。

ときには、自分の説明がうまく伝わらず、悔しい思いをすることもあるでしょう。
しかし、その経験こそが、研究を鍛え、皆さん自身を鍛えます。研究とは、考える力と同時に、伝える力、聞く力、協働する力を磨く営みでもあるのです。

現在、私たちが向き合っている社会的な課題はますます複雑になっており、一つの専門だけで解決できるものは多くありません。異なる分野の専門家と協働しながら課題に取り組むことが、これからはますます重要になっていきます。人と協働する力もまた、研究力の大切な一部であることを、ぜひ心に留めておいてください。

三つ目は、特に博士前期課程に入学した皆さんには、後期課程への進学を、ぜひ真剣に考えてほしいということです。

博士号は、言うまでもなく最高の学位です。
日本では長い間、博士とは一部の特別な人が取得するものであり、主として大学教員になるためのものだと受け止められてきました。
「末は博士か大臣か」という言葉があるように、博士はそれほど特別で貴重な存在だったのです。

しかし、現代における博士号の意味は、もはやそれだけではありません。
本学の博士号は、現代の複雑な課題に対して、自ら問いを立て、知を統合し、新たな解決の道筋を切り拓く、そういう力を備えた人材であることの証しです。

いま、生成AIの急速な発展によって、社会のあり方は大きく変わりつつあります。
知識や情報にアクセスすること自体の価値は相対的に低くなり、むしろ、何を問うのか、何を大切だと判断するのか、そして何を新しい価値として生み出すのかが、ますます重要になっています。
そうした時代だからこそ、私たち電通大が授与する博士号の価値はますます高くなっています。

実際に、産業界でもその価値への理解は着実に広がっています。本学においても、博士後期課程への進学者は近年、毎年増加しています。

なお、本学では、博士後期課程の学生が研究にしっかりと向き合えるよう、様々な支援を整えています。
研究環境の整備のみならず、手厚い経済的支援やキャリア形成の支援を進めています。博士後期課程は、もはや「細く険しい個人の道」ではなく、大学としてその挑戦を支えていく道になっています。

もちろん、修士課程を終えて社会に出ることも、十分に意義と重みのある選択です。けれども、研究の面白さに触れ、もう少し深く考えてみたい、まだ見えていないところまで進んでみたいと感じたなら、あるいは、より高い研究力を身につけて社会で力を試したいと思うなら、その気持ちをぜひ大切にしてください。

本日、博士後期課程に入学した皆さんには、まさにその道を選んだこと、最高の学位に向かって歩み始めたことに、誇りを持ってほしいと思います。

博士課程における研究は、先ほど申し上げた「難しい問いに粘り強く向き合う」ことが特に大切になってきます。そこでは、知識の量だけではなく、問いに耐える力、考え続ける力、自分の頭で道を切り開く力が重要視されます。

私は、博士号とは、一部の特別な人だけのものではなく、自ら問いを持ち、その問いに誠実に向き合い続ける人に開かれた学位だと思いっています。どうか自信と誇りをもって、自分自身の研究を深く育てていってください。皆さんの挑戦に、私は大きな期待を寄せています。

以上、私から、お伝えしたいことを三つ申し上げました。
難しい問いから逃げないこと。
研究を自分の中に閉じ込めずに外の世界と関わっていくこと。
そして、自らの可能性を信じて、さらに高みを目指すことです。

どうか本学大学院で、自分の問いを大切に育て、研究に真正面から向き合い、自分の可能性を大きく広げてください。
皆さんがこの場所で豊かな研究生活を送り、それぞれの分野で大きく成長していかれることを、心から期待しています。

以上をもって、大学院入学式の告辞といたします。