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国立大学法人 電気通信大学

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教員紹介

全脳アーキテクチャ連携研究室

山川 宏 連携教授

  • 所属:特定非営利活動法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
  • メールアドレス:ymkw@is.uec.ac.jp
  • ウェブサイト:新しいウィンドウが開きます https://wba-initiative.org/a

研究目的

近年、人工知能(AI)は様々な問題領域で人間の能力を上回り、さらに発展が続けば、あらゆる知的能力において人間を凌駕した汎用人工知能(AGI)が近未来に出現するでしょう。AGIとは、多様な問題領域において多角的な問題解決能力を自ら獲得し、設計時の想定を超えた問題を解決できる汎用性をもつAIです。そこから得られる恵みは莫大ですが、それが特定の組織などに独占されれば大きな富の偏りを生み出しかねません。また、その振る舞いや価値観が人間と一致していなければ様々な問題を引き起こしかねません。

そうした様々な落とし穴をさけて「人類と調和した人工知能のある世界」というビジョンを実現するためには、AGIを人に優しい形で構築し、かつ、全人類の公共財としてゆくべきだと考えます。技術的には、人間の脳に似せてつくることにより人の対話などにおいて親和性を高められます。
こうした狙いから、私たち全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)は、NPOという公益的な立場をとりつつ、次に述べる全脳アーキテクチャ(WBA)アプローチによる脳型AGIのオープンな開発を、2015年から継続的に推進しています。

具体的な研究内容

WBAアプローチは「脳全体のアーキテクチャに学び人間のようなAGIを創る(工学)」です。具体的には、脳の各器官を機械学習モジュールとして開発し、それら複数の機械学習モジュールを脳型の認知アーキテクチャ上で統合することによります。こうして、脳の構造を皆が合意できる共同基盤として用いることで開発を加速できるのです。
そのために脳参照アーキテクチャ(BRA)駆動開発という方法論を発展させてきました。BRA駆動開発は、脳をリバース・エンジニアリングすることでBRAという標準的な仕様データを共同で作成し、次にBRAデータに基づいて実装を行う開発方法論です。BRAは、人間の認知・行動能力に大きな影響を与える脳の中程度の粒度の解剖学的知識を抽出した情報フロー構造のデータ(BIF)と、その構造に対して整合的に体系化された機能の構造(HCD)から構成されます。

現在(2022年度上期)時点では、BRAの設計が中心的な研究開発活動であり、主に以下のような研究課題に取り組んでいます。

  • 脳の様々な領域についてのBRA設計。興味ある脳領域ごとに解剖学的構造を調査/整理し、その構造に整合する計算機能の体系化
  • 任意の脳領野間の神経接続の存在について、信憑性を担保できる証拠(文献や実験結果等)を標準的な形式で提示できるデータの蓄積
  • 人間の大脳新皮質における全ての領野間について、計算モデルに利用可能な神経接続の有無と接続パターン明らかにする
  • BRA上の計算機能の仮説に基づいて、有用な認知機能を生物学的に妥当なかたちで計算モデルとして実装することが可能であることの検証

教員からのメッセージ

NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブでは、脳参照アーキテクチャ(BRA)駆動開発を利用して、脳に似たソフトウエアを構築することに興味のある皆様の参加をお待ちしています。

参考文献

〔1〕Yamakawa, H. (2021). The whole brain architecture approach: Accelerating the development of artificial general intelligence by referring to the brain. Neural Networks: The Official Journal of the International Neural Network Society, 144, 478–495.
新しいウィンドウが開きます https://doi.org/10.1016/j.neunet.2021.09.004
〔2〕山川 宏. (2022). 全脳アーキテクチャ ─ 機能を理解しながら脳型AIを設計・開発する ─. In 横澤一彦 (Ed.), 認知科学講座4 心をとらえるフレームワークの展開 (pp. 209–249). 東京大学出版会.
新しいウィンドウが開きます http://www.utp.or.jp/book/b609203.html