2024.03.11
2024年3月11日(月)に、国立大学法人電気通信大学(東京都調布市、学長:田野俊一、以下「本学」)のUECコミュニケーションミュージアムが所蔵する星間塵合成実験装置が日本天文学会の日本天文遺産に認定されました。
日本における天文学(暦学も含む)的な視点で歴史的意義のある史跡・事物を日本天文遺産として認定するものとして、日本天文学会が設けている認定制度です。2018年度の制度創設以来、2022年度までに合計12件が認定されています。詳細は日本天文学会のウェブサイトをご覧ください。
「星間塵合成実験装置」(以後、本装置)は、終焉期の恒星の質量放出における固体塵粒子の合成を、マイクロ波放電によるプラズマを用いて再現する実験装置です。本学の坂田朗助教授(1942年~1995年)らは、恒星からの質量放出における、恒星風ガスから固体塵粒子が凝縮する様子を再現するため、世界に先駆け、本装置を製作しました。本装置は、マイクロ波放電部の設計から導波管の製作、枠組みの溶接に至るまで、坂田氏らにより手作業で組み上げられた世界に1台しかないものです。
本装置で合成された固体微粒子は、急冷炭素質物質と名付けられ、星間塵について観測される様々な特徴を再現しました。急冷炭素質物質は坂田氏らの実験天文学の功績として国際舞台で顕著に認知され、今でも広く炭素質星間塵を模擬する物質の一つとして引用されています。最近では本装置を用いて新星の周りで生まれる有機物の塵の特性を極めてよく再現する急冷窒素含有炭素質物質の合成に成功しています。一方で、本装置が生み出す研究成果は、日本の赤外線宇宙望遠鏡IRTSや、赤外線天文衛星「あかり」による星間塵研究に繋がり、日本のスペース赤外線天文学の発展を支える役割を担ってきました。
本装置は、坂田氏が本学に在職した1970年代(特に1973年以降)に製作され、2008年からは、東京大学大学院理学系研究科天文学教室において、また2023年からは同研究科附属天文学教育研究センターで使用・管理されています。
天文学教育研究センターでの使用終了後は、所有者の本学UECコミュニケーションミュージアムにおいて保管展示される予定となっています。
詳細はPDFでご確認ください。