2024.08.07
小西健太郎さん(研究実施当時情報学専攻博士前期2年)、野崎裕二客員准教授(人工知能先端研究センター)、松倉悠助教(情報学専攻)、坂本真樹教授(情報学専攻)は、EC(電子商取引)の商品レビューに記載された「ふわふわ」「さらさら」といった手触りなどの質感情報が、消費者の購買意欲をかき立てることを明らかにしました。
ECプラットフォームにおいては、商品レビューに質感情報を含めたほうが購買につながると考えられます。
本研究成果は、日本バーチャルリアリティ学会論文誌に掲載されました。
メタバース(仮想空間)環境における商品やサービスの取引が増える中、実際に手に取れない製品の購買に関し、紹介文などの情報がますます重要となっています。2022年1月の経済産業省の調査では、2020年にEC市場規模が2.2兆円に達した一方、オンライン購入における消費者の不安として「生地の質感などが確かめられない」という回答が59.9%に上りました。ECにおける購買活動において消費者の不安を低減するには、商品の質感に関する情報を提供することが有効と考えられます。
本研究では、消費者にとって有用な製品レビューを分析し、購入につながる要素を調査しました。製品の物理的特性を表現するために使われる質感情報に焦点を当て、被験者実験により、製品レビューにおける質感情報の有無が購入意欲に与える影響のデータを収集・分析しました。
また、本研究では、米OpenAIの生成AI「ChatGPT」を活用し、質感情報を含む商品レビュー文と含まない文を生成し、それぞれのレビュー情報による購買意欲への影響を調査しました。
本研究では、商品レビュー内の質感情報の有無による購買意欲への影響を調査しました。分析結果より、質感情報は購買意欲に対して有意に影響をもたらしていることが示されました。ECプラットフォームにおいては、消費者に商品レビューの投稿を求める際に質感情報を含めたほうが購買意欲は高まると考えられます。
各商品レビューに対する購買意欲について、質感情報の有無ごとに平均値と標準偏差を求めました。この差を統計的に確認するため、2つのサンプルの平均値比較において統計的な有意差があるか判断するのに用いられる分析手法「t検定」を用いました。
その結果、質感情報は商品レビューにおいて購買意欲値に対して大きな影響を与えていると考えられます。
質感情報の有無による購買意欲値の平均を画像ごとに比較したグラフは下図の通りです。
参加した被験者が限定的だった本研究結果の分析をさらに発展させるため、より幅広い年代や性別を対象とする必要があります。
今後は、自然言語処理技術を導入し、商品レビュー内の各単語と購買意欲との関連を調査することを予定しています。これにより、購買意欲値に対して影響の大きい要素を明らかにし、販売者および購入者の両者にとって効率的かつ確実なオンラインECプラットフォームの開発につながると期待されます。
(論文情報)
論文雑誌名:日本バーチャルリアリティ学会論文誌(2024年29巻2号p85-88)
タイトル:オンラインECプラットフォームにおけるレビュー文中の質感情報が購買意欲に与える影響
著者:小西 健太郎、野崎 裕二、松倉 悠、坂本 真樹
DOI:(新しいウィンドウが開きます)https://doi.org/10.18974/tvrsj.29.2_85
詳細はPDFでご確認ください。