2024.11.26
*通常、強い磁場を得るには専門施設が必要であるが、今回、簡単で軽量なポータブル40テスラ強磁場発生装置の製作に成功した。
*入手性の良い汎用品と、Raspberry PiやPythonプログラムを利用した簡素な設計で、製作法もすべて公開した。
*11台の「量産」に成功し、日本各地に配置され始めた。国内の強い磁場を利用した科学・工学研究を加速できる。
池田暁彦助教(基盤理工学専攻)は、40テスラもの強磁場を発生する扱いの容易なパルス強磁場発生装置の製作法を公開し、さらに「量産」化に成功しました。国内の強い磁場を利用した理学・工学研究が加速すると期待されます。
強磁場は、物質の特性を解明するための重要なツールであり、物性物理学、天体物理学、化学、さらには生物学においてもその役割は重要な位置を占めています。
池田助教の研究チームは、40テスラの強磁場を発生させるポータブルなパルス磁場発生装置を開発し、その製作法を公開しました。この成果は、2024年に Journal of Applied Physics 誌に掲載された論文「A concise 40 T pulse magnet for condensed matter experiments」で発表されており、論文はオープンアクセスで公開されています。また、装置の詳細な製作方法もすべて論文の補遺に掲載されています。
今回開発された装置は、入手性の高い市販部品と自作のコイルを組み合わせて作られており、Raspberry PiやPythonを使用したシンプルな設計が特徴です。この装置は40テスラの強磁場を2ミリ秒のパルスで発生でき、通常必要とされる大規模な専門施設を必要とせず、研究者や技術者が簡単に扱うことが可能です。また、装置の設計はオープンに公開されており、誰でも自由に利用し、改良することができます。
さらに、この装置は11台が「量産」され、すでに日本各地の5カ所の研究機関で使用が始まっています。この技術は、強磁場を活用した理学・工学の研究を加速させ、物性物理学や化学、生物学など、多様な分野での研究進展に寄与することや、国内の強磁場発生環境が多拠点化し、ネットワークのハブとして機能することで、国内の強磁場を利用した科学・工学研究を一層加速させることが期待されています。
これにより、強磁場中での新しい物質の磁気的な機能性の発見や、強磁場中におけるプラズマ乱流の解明が進み、宇宙・天体の磁場や機能物質に関する新たな知見が得られる可能性があります。強磁場による量子電磁気学の検証や、生命活動への磁場効果なども検証されることで、新しい物理学の解明にも寄与するでしょう。
今後はさらに多くの装置を国内外に展開し、強磁場研究の門戸を広げることで、強磁場を利用した新たな研究開発が期待できます。
今回の装置はグラファイトやネオジウムベースの化合物といった材料の磁気抵抗、磁化、磁歪の測定において、その有用性が実証されています。最大40テスラの磁場および最低4.2ケルビンの低温での実験に成功しており、この装置が多用途に応用できることが示されています。
詳細は以下のPDFにてご確認ください。