2024.11.27
情報理工学研究科にて通年開講している授業「実システム創造」内で、琉球大学農学部と共同研究を1年間行い、その成果をジャーナル論文にまとめ日本熱帯農業学会に投稿し、掲載が決定しました。
また、ISSAAS(International Society for Southeast Asian Agricultural Sciences)開催の国際学会にて成果を発表しました。
「実システム創造」授業は、実社会へのシステム実装を目的とした授業です。前学期は企業から講師の方を招き、UI/UXデザインやアプリ開発・アーキテクチャについて講義を受けます。後学期は講師の方に指導をいただきながら、自分の実装したいシステムについて、アイデア出しから開発まで半年かけて行います。最後には、本学教員や企業の方に対して成果発表を行います。例年、参加した学生は苦戦しながらもWebアプリ・スマホアプリ等で動くものを作るところまで仕上げ、将来実システムを創造する人材として確実に成長しています。
昨年度、本授業を履修した橋山智訓研究室の名執陸さん(情報学専攻博士前期2年)は、農業のIoT化をテーマに取り組みました。実際の農作物に対してシステムを開発するため、琉球大学にて作物学を専門に研究している諏訪研究室に共同研究を依頼しました。
作物を栽培する過程や注意点などを学びながら諏訪研究室と議論を重ね、工学の力で解決できる課題として潅水作業(水やり)に着目しました。潅水作業は農作業の負担のうち大きな割合を占め、また多くの水資源を消費するため節水が求められています。これに対し、適量の潅水を自動で行うシステムを開発しました。
本授業による予算の支援を受けながら、最終発表までに4回琉球大学を訪問し、農業用ハウス内でシステム実装を行いました。実装後にメロンの栽培実験を行った結果、既存手法と比較して、品質を変えずに1/3の節水を実現しました。
本研究の成果をジャーナル論文にまとめ、『調達容易な土壌水分センサおよびマイコンを用いた汎用性を高めた潅水システムの提案と実現性の評価』の表題で日本熱帯農業学会に投稿し、掲載が決定しました。本論文は来年、J-STAGE等でアクセス可能になる予定です。また、ISSAAS開催の国際学会にて成果を発表し、農学分野の専門家から興味を持たれました。
本授業では、学生のアイデアを実現するためのリソースを数多く提供しています。通年の授業で大変なこともありますが、成長する良い機会となります。来年度、多くの学生からの履修を期待しています。