2025.08.04
榎木光治准教授(共同サステイナビリティ研究専攻/機械知能システム学専攻)の研究室(以下:榎木研究室)と、株式会社前川製作所(以下:前川製作所)が共同で出願した特許「熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、およびマイクロチャンネル熱交換器」が、ヨーロッパ特許庁(EPO)にて特許登録されました。
従来、多数の微細流路で構成されるプレート式熱交換器では、気体と液体が混合した(以下、気液二相流)冷媒が熱交換器内を流動する際に、全ての流路に冷媒を均一に配分することができず、熱交換器の性能を改善する上で大きな課題となっていました。
本登録特許では、高速度カメラとサーモグラフィーを利用して、流路内における冷媒の動きを可視化することで、どうして偏りが生じてしまうのかという問題を実験的に明らかにした上で、対応策を講じた結果、全ての微細流路内で気液二相流状態にある冷媒を均一に流動することを可能としました。本登録特許の手法を用いて、微細流路内を冷媒が均一に移動している様子を可視化することは、榎木研究室が開発した実験装置によって実証されています。また、熱交換器の性能が飛躍的に向上することにより、その体積を従来比5分の1以下、冷媒充填量を20分の1で設計できることが、前川製作所における実機での実証実験によって確認されました。前川製作所は自然冷媒を利用した大手冷凍空調機メーカーとしても世界中で知られています。今回の共同研究によって、アンモニアという非常に優れた物性を持ちながらも有毒性等の問題で使用が躊躇されていた冷媒の充填量を大幅に削減できることになります。つまり、有事の際の施設の小型化も達成できるため、主に導入されるコールドチェーン分野において、導入のハードルとコストを下げることが可能です。
本登録特許は、熱交換器の小型・軽量化のみならず、熱交換器を製造する際の省エネルギー化や省資源化など、地球環境の改善に大きく貢献する事が期待されます。