2026.03.13
佐藤光哉助教(人工知能先端研究センター)と石橋功至教授(先端ワイヤレス・コミュニケーション研究センター)は、数千、数万のIoTデバイスから送られるデータを、無線通信のプロセスそのものを利用して瞬時に集計・解析する「空中計算(Over-the-Air Computation)」の新手法を開発しました。従来の空中計算では、計算の精度を上げようとすると通信ノイズの影響を受けやすくなるという矛盾がありましたが、本研究では「通信環境に合わせて計算の重み付けを自動調整する」仕組みを導入しました。これにより、ノイズが多い環境でも安定して高精度な解析が可能になりました。
本研究では、分散する無線センサから集約した観測データに対する加重平均演算を対象に、空中計算を高精度化する新しいアルゴリズムを提案しました。具体的には、「適応型重み付け(Adaptively Weighted Averaging)」という手法を用いています。各センサーのデータの重要度(重み)を、その時の通信の調子(SNR:信号対雑音比)に合わせてカットしたり調整したりします。通信状況が良い時は精密な計算を行い、悪い時はノイズを拾わないように計算方法を単純な平均に近づけるといった、いわば情報の取捨選択を通信路上でリアルタイムに行う仕組みです。提案手法の具体的な応用例として、統計学的な予測手法であるガウス過程回帰の分散処理方式への適用法を示しました。
本手法を無線環境地図(電波マップ)の構築に応用したところ、従来の空中計算方式に比べて、通信環境が悪化しても計算エラーを劇的に抑制できることが証明されました。特に、情報の集約に必要な通信回数を、デバイスの数に依存せず一定に保つことができるため、数千台規模のセンサーネットワークにおいても超低遅延で地図を構築可能です。これは、刻一刻と変化するスマートシティの状況をリアルタイムに把握する強力なツールとなります。
この技術は、6G(第6世代移動通信システム)の基盤技術としての活用が期待されます。
自動運転の安全性向上
:数百台の車両や道路センサーから、死角の情報を一瞬で集約し、事故を未然に防ぐリアルタイム道路状況把握。
スマート農業
:広大な農地に散らばった数万個のセンサーから、土壌の水分や温度を一括回収し、最適な水やりを自動で行うシステム。
災害対策
:地震発生時に、無数の建物センサーから建物の歪みデータを即座に収集し、危険エリアを数秒で特定する。
タイトル:Adaptively Weighted Averaging Over-the-Air Computation and Its Application to Distributed Gaussian Process Regression
著者:Koya Sato,Koji Ishibashi
掲載誌:IEEE Transactions on Cognitive Communications and Networking
DOI:10.1109/TCCN.2025.3562345
URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/10970030
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