2026.04.06
国立大学法人電気通信大学(東京都調布市、学長:村松正和)の孫光鎬准教授(機械知能システム学専攻)、国立大学法人東京農工大学(東京都府中市、学長:中村暢文、以下 「東京農工大」)の田中綾教授、および株式会社LIXIL(以下「LIXIL」)は、ミリ波センサーを用いた猫の呼吸計測精度に関する共同研究を実施しました。
本共同研究では、ミリ波センサー技術が猫の呼吸数を高い精度で計測できる性能を有することを実証しました。この検証成果に基づき、LIXILは愛猫の健康管理をサポートする新製品として「neamo」を製品化し、2026年2月に「Makuake」にて販売を開始しました。
近年、家族の一員として猫を迎える家庭が増える中、愛猫の健康寿命を延ばしたいという飼い主の意識が急速に高まっています。特に「安静時の呼吸数」は、猫が本能的に体調不良を隠す習性がある中で、心疾患などの病変を早期に察知するための極めて重要な指標(バイタルサイン)として注目されています。しかし、家庭内で日常的に呼吸数を正確に把握することには以下の課題がありました。
従来の健康管理デバイスは装着型が多く、警戒心が強い猫や首輪を嫌がる猫にとって、大きなストレスとなることが少なくありませんでした。
猫は狭く暗い場所を好むため、従来のカメラによる画像解析では、寝床や箱の中に潜り込んでいる際の計測が困難でした。また、室内カメラの常時稼働に対する飼い主のプライバシー保護も課題となっていました。
こうした猫にストレスを与えず、かつプライバシーにも配慮するという課題を解決する手段として、微細な動きを非接触で検知できる「ミリ波センサー」の活用が期待されています。これを受けて、本学の持つ高度なセンシング技術と、東京農工大の獣医学的知見をもって、ミリ波センサーがこれらの課題解決に資する性能を有するか検証することを目的に共同研究を実施しました。
2024年11月から2025年3月にかけて、本学、東京農工大、LIXILの三者で共同研究を実施し、ミリ波センサーを用いた猫の呼吸計測精度の検証を行いました。
猫にミリ波を照射し、体表面で反射された反射波を計測することで、猫に触れることなくお腹の上下運動から呼吸数を算出することができます。長毛猫と短毛猫を測定対象とし、自動車部品や電子機器・デバイスの微細な歪み測定、医療用機器のキャリブレーション(校正)など、極めて高い精度が要求される産業分野で利用されている高精度レーザー計測器をリファレンスとして、非接触型呼吸計測デバイス「neamo」に用いるミリ波センサーの測定精度を検証しました。 図1に検証に用いた計測システムの概要を記します。
検証の結果、図2に示すように、高精度レーザー計測器での測定結果に対する平均計測誤差はわずか2.7%であり、実用上十分な計測精度を確認しました 。特に長毛の猫がうつぶせで寝ている状態では、平均誤差0.5%という極めて高い精度で呼吸を捉えることに成功しています。(本成果は特定の実験条件下での検証結果であり、実際の使用環境等により変動する場合があります。)
共同研究による精度検証の成果を活用し、LIXILは猫の体に触れることなく安静時の呼吸数を計測できる非接触型呼吸計測デバイス「neamo」を開発・製品化しました。デバイスで計測した呼吸数は専用アプリで確認でき、呼吸数が「いつもどおり」かどうかを判定し、通知する機能も備えます。本製品は、LIXIL独自の製品設計により、飼い主のプライバシーを保護しつつ、猫がお気に入りの場所でリラックスしている間に自動で健康管理を行うことを可能にしています。2026年2月より「Makuake」にて販売を開始しています。(図3)
本プロジェクトを通じた三者の産学連携成果は、ペットのわずかな体調変化を早期に発見する一助となり、IoT技術を活用した「動物福祉(アニマル・ウェルフェア)」の向上に貢献するものです。本学および東京農工大は、今後も最先端の技術と知見を社会課題の解決に役立てるべく、研究活動を推進します。また、LIXILは「人とペットが末永く幸せに共生できる暮らし」の実現に向け、イノベーションを取り入れた製品・サービスの提供を続けてまいります。
製品名:非接触型呼吸計測デバイス 「neamo」
詳細URL:https://newsroom.lixil.com/ja/2026020202
販売情報:https://www.makuake.com/project/neamo/
本研究成果は Signals 誌に 2026年2月25日(水)付で受理されました。
タイトル:Non-Contact Heart Rate Estimation via Higher Harmonic Analysis Using 24-GHz Doppler Radar: Validation in Humans and Anesthetized Cat
著者:Huu-Son Nguyen1, Masaki Kurosawa1, Koichiro Ishibashi1, Ryou Tanaka2, Cong-Kha Pham1 and Guanghao Sun1
著者所属:電気通信大学 情報理工学研究科1, 東京農工大学 農学部附属動物医療センター2
DOI:https://doi.org/10.3390/signals7020024
詳細はPDFでご確認ください。