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【ニュースリリース】宇宙の電磁波の通り道「ダクト」がつくる脈動オーロラは朝に多い! ~過去7年分の地上-衛星同時観測から明らかに~

2026.08.28

図 1:先行研究および本研究で示したモデルの概要。真夜中前(夕方側)ではコーラス波の発生そのものが少ない。真夜中付近になるとコーラス波が発生し、脈動オーロラも出現する。真夜中以降(朝側)では、ダクトによるコーラス波の長距離伝搬と超高エネルギー電子散乱、およびパッチ状脈動オーロラの発生が多くなる。

概要

  • 北欧に設置されている地上カメラで観測された「脈動オーロラ」と、磁気圏と呼ばれる地球近傍の宇宙空間であらせ衛星によって観測された宇宙の電磁波「コーラス波」の同時観測を統計的に調査しました
  • コーラス波の「長距離」伝搬と脈動オーロラの「パッチ状」構造を、宇宙空間における電子密度の管状構造「ダクト」が支配するという先行研究で示した物理モデルの普遍性を定量的に評価し、80% を超える高い割合で上記モデルが成立することを実証しました
  • このモデルを満たすような脈動オーロラの発生頻度は、真夜中から朝にかけて発生頻度が上昇することも本研究で初めて示されました

細川敬祐教授(情報・ネットワーク工学専攻)が参加する、総合研究大学院大学先端学術院極域科学コース博士後期課程3年/国立極地研究所特任研究員の伊藤ゆり氏、総合研究大学院大学/国立極地研究所の小川泰信教授をはじめとする名古屋大学、金沢大学、東北大学などを中心とした研究グループは、北欧スカンジナビア半島の計6地点に設置されている全天型オーロラ撮像カメラと、地球磁気圏を観測する探査衛星「あらせ」(ERG)による脈動オーロラの同時観測データを用いて、宇宙の電磁波であるコーラス波の長距離伝搬とパッチ状脈動オーロラの発生を統計的に調査しました。「あらせ」の観測が開始された2017年3月から2024年3月までの冬季(オーロラの観測が困難な白夜期間を除いた時期)に地上で観測された画像データを、同時に取得された衛星データと比較し、計30時間分の事例を抽出しました。その中から、これまでに提案されてきた物理モデル「脈動オーロラの『パッチ状』構造とコーラス波の『長距離』伝搬を、宇宙空間において電子密度が管状となるダクト構造(以下、『ダクト』と呼ぶ)が支配している」の普遍性を定量的に評価したところ、80%を超える割合でそのモデルが成立することを明らかにしました。また、このモデルを満たすようなオーロラの発生頻度は、真夜中から朝にかけて上昇することも本研究で初めて示されました(図1:先行研究および本研究で示したモデルの概要)。
近年では、地球大気中のオゾン減少を誘発すると考えられている超高エネルギー電子の降り込みとパッチ状脈動オーロラの発生は関係していることが分かってきており、脈動オーロラ研究の重要性は一層高まっています。本成果は、パッチ状脈動オーロラとダクトの関係を明らかにしたことで、脈動オーロラのパッチ状構造から超高エネルギー電子分布の可視化につながることが期待されます。

研究の背景

極域の夜を彩るオーロラは、磁気圏と呼ばれる地球近傍の宇宙空間から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)が酸素や窒素などの大気粒子と衝突することで発生する発光現象です。特に、脈動オーロラと呼ばれる点滅するオーロラは、磁気圏を伝搬する電磁波であるコーラス波によって高エネルギー電子が散乱・降下することで発生しています。コーラス波は磁気圏の赤道面付近で発生すると考えられており、そこから磁場に沿って地球方向へ長い距離を伝搬するほど散乱される電子のエネルギーは高まります。しかし、一般的な伝搬では、コーラス波は磁場に沿って伝搬せずに減衰してしまいます。そこで、著者らの先行研究では、地上カメラ、大型大気レーダー、「あらせ」の同時観測が成立した単一事例の解析に基づいて、「コーラス波の『長距離』伝搬、超高エネルギー電子の散乱と降下、および脈動オーロラの『パッチ状』構造は、磁気圏における電子密度の『ダクト』構造によって支配されている」という物理モデルを提唱しました。

一方で本研究では、その次のステップとして、この提唱モデルが統計的にどの程度の普遍性をもって成り立つのか、どの時間帯で多く発生するのかを定量的に評価することを目的とした統計解析を行いました。

研究の成果

「あらせ」の観測が開始された 2017年3月から 2024年3月までの観測シーズン(白夜期間を除いた時期)において、次の2つの条件を満たす同時観測事例を60イベント抽出しました。

  1. 晴れてオーロラの有無や形状が確認できること
  2. 「あらせ」がコーラス波の発生源である磁気赤道面から遠く離れた場所に位置していたこと

抽出された60イベントの内、ディフューズオーロラまたは脈動オーロラが観測され、かつ、長距離伝搬するコーラス波が観測された事例(ケース1)は真夜中から朝方にかけて発生頻度が増加することが分かりました。一方、ディフューズオーロラまたは脈動オーロラは観測されたが、長距離伝搬するコーラス波が観測されなかった事例(ケース2)は真夜中付近に発生頻度のピークとなり、朝方にかけては減少する傾向が明らかとなりました(図2:ケース1とケース2の発生頻度の変化)。
さらに、ケース1とケース2について、オーロラの形状(パッチ状/非パッチ状)も調査しました。その結果、ケース1では93%のオーロラがパッチ状脈動オーロラであるのに対し、ケース2では86%でディフューズオーロラまたは非パッチ状脈動オーロラであることが分かりました。このことから、先行研究によって提唱したモデルが 80% を超える高い割合で成立することが示されました。

図2:(a) ケース1(赤)とケース2(青)のイベント数。(b) 全イベント数に対するケース1(赤)とケース2(青)のイベント数の割合。ケース2の発生割合が真夜中付近でピークを持つのに対し、ケース1は真夜中から朝側にかけて上昇していくことが分かる。

今後の展開

本研究によって、ダクトがパッチ状脈動オーロラに深く関係していることが明らかとなりました。ダクトは磁場構造に沿った電子密度や磁束密度の粗密によってコーラス波を閉じ込めますが、ダクトが「いつ:時間」「どこで:電離圏または磁気圏」「どのように:プラズマ物理」形成されるのかは明らかとなっていません。そこで近年、ダクトや長距離伝搬する波を観測することを目的とした衛星プロジェクトが進んでいます。そのような衛星と北欧で運用が始まる「EISCAT_3D レーダー」による極域電離圏の3次元観測を組み合わせることによって、「いつ・どこで・どのように」ダクトが形成されるのかについてアプローチできると考えています。そこから宇宙天気予報の予測精度向上や超高エネルギー電子が存在する場所の可視化へ繋げていくことを目指しています。

(論文情報)

論文タイトル:Statistical Study on Pulsating Auroras and High-Latitude Propagation of Chorus Waves Based on Conjugate Observations of Ground-Based Imagers and Arase Satellite
掲載誌:Journal of Geophysical Research: Space Physics
掲載日:2026年7月2日(木)
著者:伊藤 ゆり、小川 泰信、吹澤 瑞貴、田中 良昌、門倉 昭、三好 由純、細川 敬祐、新堀 淳樹、堀 智昭、笠原 禎也、松田 昇也、土屋 史紀、熊本 篤志、松岡 彩子、寺本 万里子、山本 和弘、篠原 育
DOI:https://doi.org/10.1029/2026JA035231

(謝辞)

本研究は JSPS 科研費(JP21KK0059, JP22H00173, JP22K21345, JP23K25925, JP24K07112, JP24K00898, JP25H00696)の助成を受けたものです。また、名古屋大学宇宙地球環境研究所(ISEE)の共同利用・共同研究プログラムおよび東北大学惑星プラズマ・大気研究センター(PPARC)の共同研究プログラムによって実施されました。

詳細はPDFでご確認ください。

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