2026.10.06
電気自動車や電子機器の安全性を飛躍的に高める「全固体リチウム電池」の実現に向け、軽量で優れたイオン伝導性を持つ固体電解質の開発が望まれています。中村淳教授(基盤理工学専攻)と日亜化学工業株式会社の市川諒英氏(先進理工学専攻博士前期課程2015年修了)らの共同研究チームは、「UCr4C4型」の結晶構造をもつ、軽元素中心で構成される化合物 RbLi(Li3SiO4)2を合成し、そのリチウムイオン伝導特性と詳細な伝導機構を初めて解明しました。
実験と計算科学を組み合わせた解析により、結晶内をイオンが移動する際のエネルギー障壁が0.30 eVと極めて低いことが判明しました。現在の試作品では欠陥形成が伝導の制限要因(律速段階)となっていますが、リチウム過剰な組成設計を行うことで高導電率化できるという明確な指針が得られました。
RbLi(Li3SiO4)2はLED用緑色蛍光体の母体材料としても期待されており、本研究により、発光材料としての可能性に加え、固体電解質としての新たな機能が明らかになりました。本成果は、軽量で安全な次世代全固体電池の開発に新たな選択肢を与えるものです。
現在主流のリチウムイオン電池は液体電解質を使用しているため発火リスクがありますが、これを固体のセラミックスなどに置き換えた「全固体電池」は安全性が高く、急速充電も可能になると期待されています。特に大気中で扱いやすい酸化物系の固体電解質が注目されていますが、従来知られている代表的材料(Garnet型Li7La3Zr2O12)はランタンやジルコニウムといった重い元素を含むため、密度が約5.12g/cm³と大きく、電池全体の軽量化(重量エネルギー密度の向上)に限界がありました。そのため、軽元素を中心に構成された固体電解質の開拓が求められていました。
研究チームは、主に軽元素からなる化合物 RbLi(Li3SiO4)2(理論密度2.74g/cm³)に着目し、固相反応法を用いて多結晶粉末および焼結ペレットを合成・評価しました。さらに、量子力学に基づく第一原理計算、およびニューラルネットワーク分子動力学シミュレーションを融合させ、リチウムイオンが結晶内をどのように移動しているかを原子レベルで視覚化・解析しました。
本研究により、以下の重要な知見が得られました。
本成果は、これまで見過ごされていたUCr4C4型構造が優れたリチウムイオン伝導骨格であることを示した画期的な発見です。今後はリチウム量の最適化による高伝導度化や、粒子間の緻密性を高める製造プロセスの最適化を進めることで、軽量かつ安全で高出力な全固体電池の実現へ大きく貢献することが期待されます。
論文タイトル:UCr4C4-Type RbLi(Li3SiO4)2: A New Solid Electrolyte Framework for Fast Li-Ion Conduction
著者名:Akihide Ichikawa*, Sadakazu Wakui, Takumi Seihara, Yudai Yokoyama, Haruka Tsubohira, and Jun Nakamura*(*責任著者)
掲載雑誌:Advanced Functional Materials
DOI:10.1002/adfm.78600
公表日:2026年9月24日(木)
本研究は、文部科学省「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」事業(課題番号:JPMXP1225UE5292)の支援を受けて実施されました。
詳細はPDFでご確認ください。