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学長室から:大学案内

平成28年度 大学院入学式

2016年4月6日
福田 喬

皆さん、こんにちは。

電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。ご来賓の本学同窓会目黒会の野々村欽造会長、列席の役員、副学長、各部局長、および教職員、在校生とともに、皆さんを心から歓迎いたします。併せて、皆さんの勉学を今日まで愛情をもって励まし続けてこられたご家族の皆様にも、心からお祝いを申し上げます。

本日お迎えしたのは、博士前期課程への入学者525名、博士後期課程への入学者37名、合計562名の皆さんです。その中の101名の方は、他大学を卒業、修了した後においでになった方です。本学大学院を選んでいただいたことに心から御礼を申し上げます。
また、留学生の方が38名、社会人の方が11名、それぞれいらっしゃいます。多様なバックボーンを持つ人たちが集まることは、いろいろな意味でよい刺激となります。シナジー効果を生み出す積極的な交流を願っております。

さて、今や、情報通信技術の進展により、社会、経済の構造は勿論のこと、知識や価値の創造プロセスまでもが大きく変わる「大変革の時代」に入って来ています。そのような時代に必要とされるのは、IoT、セキュリティ、ビッグデータ、AI、デバイス、といった、大変革時代の社会のサービスプラットフォームを支えるために必要となる基盤技術であり、そのプラットフォーム上で新たなイノベーションを創出するために必要となるコア技術、例えば、ロボット、センサ、バイオ、ナノテク、材料、光・量子等の技術です。そして、それらを担う多様な人材と、基盤技術、コア技術の源泉となる学術研究、基礎研究の深化が求められています。
このように見てみると、どうでしょう、本学の専攻分野は社会が必要としている基盤技術、コア技術の分野に正にぴったり合致しているのです。そうなると、皆さんは、大変革の時代に入ったこの社会が求めている、高度専門技術者・研究者としての人材候補に他なりません。その意味から、皆さんには、将来、自分はどのような分野で、立場で、社会や技術を先導するか、または、すべきかを早く方向付けして、それに即した中長期の計画をしっかりと立てて、励んでくださることを望みます。
皆さんの中には、果たして自分はどうだろうかと少し弱気になって、ご自身の素材としての価値を十分に認識できていない方がいるかもしれません。が、皆さんは確実に社会のリーダーとなる人材です、いや、社会のリーダーとなって頂かなくてはなりません。どうか、社会の中で中心的役割を担い始める五年先十年先に必要とされる知識体系や考え方を、在学中に準備しておいてください。そのためにも、高い専門性の獲得は当然のことながら、リーダーとして世界で活躍する際に必要となる語学力、リテラシー、説得力、企画力、発信力、感化力などの人間力と学際的・複眼的な思考力を、涵養し身につける必要があります。大いに研鑽してください。

ところで、技術開発におけるスタイルには、大きく分けて2つあると言われています。「継続発展型」と「イノベーション型」です。
「継続発展型」については、製造業などがそれに基づく技術開発だけに頼っていると、例えば半導体製造や液晶製造などのように、厳しい消耗戦に突入してしまう可能性が高いと言われており、産業の根幹的で継続的で、さらに飛躍的で革新的な振興を支える研究開発は、「イノベーション型」でなければならないと指摘されています。
このイノベーションという事柄に関して、Harvard Business School の Clayton M. Christensen らが「イノベータのDNA」という分析本を著しています。イノベータがイノベーションを生み出していくのに必要とされるスキルが述べられている本です。それによると、必要とされるいくつかのスキルの中で、特に重要なのは「関連づけて思考する力」であると述べています。一見無関係に思える物事を結びつけて独創的なアイデアを生み出して行くためのスキルのことです。
Christensenらの著書には、また、「イノベーションに取り組む勇気」を持っていることも不可欠であると述べられています。その勇気とは、まず、「現状に異議を唱える勇気」、現状を変えたいという意思と言っても良いかもしれません。そしてもう一つが「リスクをとる勇気」です。失敗するかもしれないという危険性を認識した上で自らの責任で果敢にリスクをとるということであり、スマート・リスクとも言われています。
現状を変えたいという意思を常に持ち、「関連づけて思考する力」を駆使してアイデアを蓄積し、あえてリスクをとる勇気を発揮できる者がイノベータとなり得る、ということのようです。

先に述べた、リーダーとして世界で活躍する際に必要となる「人間力」や「学際的・複眼的な思考力」に加え、この「関連づける力」と「スマート・リスクをとる勇気」も在学中に獲得してください。これらこそが大学院で身につけるべき高度な教養というもので、高度専門技術者・研究者を目指す者にとって、専門性を高く太くするのと同様に欠くことのできない重要な要素だと思います。

話は変わりますが、本学は、複数の大学、企業、行政機関が参画する産学官連携の組織であるスーパー連携大学院コンソーシアムに加盟しており、そのコンソーシアムが提供するスーパー連携大学院プログラムに参加しています。このスーパー連携大学院というのは独立した大学院ではなく、全国の複数の大学が連携して進めている、イノベーション博士を養成するプログラムです。そこでは、カリキュラムの構築・実施からプログラム修了生のキャリアパスまで、コンソーシアム正会員である大学、企業、行政がそれぞれ対等な立場で共同参画して創り上げています。目的は、国際社会においてリーダーシップを発揮し、イノベーションによる価値の創造を担うことができる「志」の高い博士を育成することにあり、博士前期課程および後期課程の5年一貫教育プログラムです。5年一貫ですが、後期課程からの編入するルートも用意されています。この式典の後に開かれる大学院オリエンテーションで詳しい説明がされると思いますので、よく検討していただいて多くの方がこのスーパー連携大学院プログラムにトライされることを期待しています。

もう一つ述べておきたいのは、「研究大学強化促進事業」のことです。
本学は、2013年に文部科学省が世界水準の優れた研究大学を増強して我が国全体の研究力強化を図ることを目的に創設した「研究大学強化促進事業」において、支援の対象となる19の大学の1つに選ばれ、複数年に渡って特別経費による支援を受けています。本学は今、この追い風の下で、更に輝きを増すべく、研究力の強化と、その研究力を背景とした教育力の強化に取り組んでいます。
そのような場合、大学の研究活動は、皆さんのような大学院生の力によってかなりの部分支えられています。電気通信大学の大学院を選んでくださったのですから、本学の存在価値を高めることが、皆さんのためでもあります。大学院生としての本分に邁進してください。

さて、本学は、1918年に創設された「無線電信講習所」をルーツとしていることから、2年後の2018年に創立100周年を迎えます。そして、その100周年およびその先に向けた挑戦として、「UECビジョン2018」を打ち出し、そのビジョンに関するスローガンを作っています。「Unique & Exciting Campus」です。「電気通信大学(UEC)は、世界中の個性豊かな、Uniqueな、若者が集い、楽しくてわくわくする、魅力あふれる、Excitingな、環境で学び、新しい価値を生み出し、世界を驚かすような輝く個性が育つ学園、Campusを目指します」という意味です。

私ども教職員一同、掲げる理念の下、ビジョン達成を目指し、本学の教育・研究環境をさらに充実させ、成果を挙げ、このUnique & Exciting Campusのスローガンとともに、UEC Tokyoというだけで世界中から認知される大学にしたいと思っています。 本日ご臨席のご家族やご関係の皆様には、お子様が学ぶこの電気通信大学への引き続きのご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

以上、562名の皆さんの大学院入学をお祝いするとともに、明日を担う皆さんの活躍へのエールを送り、私の歓迎の挨拶とさせていただきます。

もう一度、電気通信大学大学院へのご入学、誠におめでとうございます。

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