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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
山本 研究室

GISビッグデータを環境・防災分野へ活かす

所属 大学院情報理工学研究科
情報学専攻
メンバー 山本 佳世子 准教授
所属学会 社会情報学会、環境科学会、地理情報システム学会、日本計画行政学会、日本都市計画学会、情報処理学会、日本地理学会
研究室HP http://www.si.is.uec.ac.jp/yamamotohp/
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掲載情報は2017年3月現在

山本 佳世子 Kayoko YAMAMOTO
キーワード

社会システム工学、空間情報科学、都市・地域計画学、環境科学、防災・減災、GIS、土地利用・空間利用、まちづくり、政策科学

社会システム工学の観点から、環境や防災、まちづくりに貢献する―。山本佳世子准教授は、コンピュータ上に地理空間情報を重ね合わせて表示する「地理情報システム(GIS)」を駆使し、そこにツイッターやSNSといった「ソーシャルメディア」などのビッグデータを組み合わせることで、新たな応用を切り拓いています。

GISの活用イメージ

ダイオキシンやPM2.5の濃度分布を地図上に表示

環境分野では、公開されているデータとGIS、大気拡散モデルを統合したシミュレーションを行っています。例えば、有害化学物質であるダイオキシンの大気中や土壌中などへの拡散状況をシミュレーションし、結果を地図上に表示する一連の解析方法を開発しました。ダイオキシンの主な発生源である焼却炉が立地するエリアを中心に分析した結果、焼却炉の数や規模と、その周辺の大気中のダイオキシン濃度は必ずしも相関しないことが分かっています。

環境リスクの評価フロー

最近では、ダイオキシンよりさらに細かい粒子状物質(PM2.5)のシミュレーションも手がけています。PM2.5の原因はいまだ特定されていませんが、このシステムを使えば、「環境リスクを評価するだけでなく、工場や火力発電所が近隣にあるといった地理的な要因も明らかにできる」と山本准教授は考えています。

東京都における2000年のダイオキシン類の大気中濃度分布(上)と土壌中の沈着量分布(下)
2000年時点の焼却炉の分布

焼却炉から排出されるダイオキシン類のデータや気象データ、土地利用データといった公開されているビッグデータを加工して総合的に分析し、地図上に可視化することで、新たな問題点をあぶり出せるかもしれません。さらに、人口分布データと組み合わせれば、将来的な環境リスクの変動を予測することも可能でしょう。

災害や観光情報もリアルタイムに

観光スポット推薦システムの例

一方、防災分野では、GISとソーシャルメディアを使い、全地球測位システム(GPS)機能の付いたスマートフォンなどの端末から、地域住民によって「ツイート」された災害情報を加工し、リアルタイムに地図上へ集約するシステムを開発しました。現在、三鷹市と共同で運用しています。平常時も地域情報として活用し、災害時は被災状況や避難経路などの最新情報を簡単に入手できます。「従来のハザードマップ(災害予測地図)にはない、地域に特化した詳しい災害情報を一覧表示できる」のがその特徴です。
これと同様の仕組みを「観光スポットの推薦システム」にも展開しています。『○△レストランの料理はどれも絶品!』、『△×の夜景はデートに最適♪』といった、観光地でツイートされた有用な情報を地図上に提示した、横浜みなとみらい地区の観光スポット推薦システムを開発しました。自分の好みや利用シーンを指定すると、それに合った観光スポットを勧めてくれます。
最近では、AR(拡張現実)スマートグラスを使って、現実世界に推薦コメントなどの情報を重ねて提示し、リアルタイムにナビゲーションする機能も追加しました。現在地と観光スポットの位置関係から、最適な経路を割り出すことも可能です。山本准教授は「2020年の東京五輪に向けた外国人向けの観光支援ツールにもなる」と期待しています。

そのほか、GISと遺伝的アルゴリズム(GA)を組み合わせた観光関連施設の適正な配置を評価する方法や、現在と過去の地図を重ねて視覚的に表示した「バーチャル時空間情報システム」なども試作しています。前者は観光計画の立案や推進に、後者は新しい観光支援や、地理・歴史の授業などに活用できます。

まちづくりへの参画や政策提言も

山本准教授は、こうした“市民参加型GIS”ともいえるシステムの開発を通じて、実際に行政計画の策定やまちづくりに参加したり、政策提言を行ったりしています。特に防災分野では積極的に活動しており、防災学術連携体の幹事として被災地へ頻繁に赴いて調査しているほか、「東日本大震災の復旧・復興への提言」(2012年3月)や、「南海トラフ巨大地震事前対策に係わる提言」(2012年9月)などを中心メンバーとして取りまとめています。
併せて、アンケートや統計処理などを使いこなした企業活動に関する調査研究も手がけています。「GISとビッグデータ、ソーシャルメディアを融合させることで、『社会と人間を結ぶ情報システム』のあり方を追究したい」と山本准教授は考えています。

【取材・文=藤木信穂】

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