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研究者情報:研究・産学連携

研究室紹介OPAL-RING
稲葉 研究室

計測工学、計測用変復調方式、ITSセンサ、ネットワークセンサ

所属 大学院情報理工学研究科
知能機械工学専攻
メンバー 稲葉 敬之 教授
所属学会 電子情報通信学会、IEEE
研究室HP http://ilab.ee.uec.ac.jp/
印刷用PDF

掲載情報は2015年8月現在

稲葉 敬之
Takayuki INABA
キーワード

車載レーダ、ITS、パルス圧縮、ステップ周波数、UWB、FMCW、超分解能法、DBF、アレーアンテナ、マルチスタティックレーダ、バイスタティックレーダ、MIMOレーダ、マルチセンサ技術

研究概要

次世代車載レーダの開発

当研究室では、「車載レーダ」などへの応用を想定した「計測技術」「計測システム」について研究している。

車載レーダ

最新の計測技術を応用することで、先行車追従、低速先行車追従、衝突被害軽減、衝突回避の機能を実現し、安全安心なITS(高度道路交通システム)社会を実現する重要センサシステムである。

計測技術

この1つとして計測用変復調技術がある。現在取り組んでいる変復調技術は、複数の周波数をステップさせ、その位相差から距離を計測する原理に基づく方式、および他原理方式との複合方式である。これらの方式で、受信機帯域のみならず送信周波数帯域も狭帯域にて高い距離分解能が得られる。通信で言うなら、同じ通信周波数帯域幅で数10倍のビットレートを実現したことと同じだ。以上の方式は、送信周波数帯域幅が狭いことにより、帯域内に複数の周波数チャンネルを設けることで相互干渉回避が可能であり、パルス間を符号変調することで帯域内干渉にも対処することができる。

計測システム

このように、計測システムを開発するためには、耐干渉性に優れ、計測覆域、精度、分解能、データレートという要求を満たす、洗練された送信波形デザインと受信信号処理アルゴリズムが求められる。
車載ミリ波レーダは法令で、送信周波数76.5GHz、帯域幅1GHz、送信電力10mWと定められている。変復調方式のデザインによっては、この条件下において、遠距離と近距離広覆域を1つのレーダで実現することも期待される。これらの計測技術はさまざまな分野に応用できる。
当研究室では、月着陸衛星「かぐや2」搭載の月着陸電波高度計(JAXA:宇宙航空研究開発機構)、航空管制2次レーダ(ENRI:電子航法研究所)などへの応用を計画している。
現在、遠距離車載レーダに採用されている、FMCW(周波数変調連続波)方式では、今後多数の車にレーダが標準装備されるようになったときに、相互干渉や誤検出の問題が発生することが予想される。また、衝突被害軽減のためには、より高分解能化が求められる。
耐干渉性向上と距離高分解能化のためには、通常ではパルス圧縮(スペクトラム拡散方式:携帯電話などの無線通信でいうCDMA方式)に進みがちだが、パルス圧縮方式では、送信パルスの往復伝搬時間から距離を計測しているため、広帯域受信機、高速A/D、高速信号処理が必要になり、高コストになってしまう。20cmの距離分解能を得るためには、数GHzのレートで信号処理を繰り返し行わなくてはならない。

アドバンテージ

構想・システム設計に基づくものづくりで、最適な技術を提供できる

車載レーダはこれから5~10年の間に携帯電話が普及したように急速に普及するだろう。この分野を本格的に大学で研究しているのは、当研究室以外にはほとんど見当たらない。この点では、早くからこの分野に取り組んでいる当研究室に大きなアドバンテージがあると言える。
稲葉自身は実際に企業の工場に席を置き、ものづくりに長年携わった経験を持つ。軍事用の高度なレーダシステムから現在取り組んでいる車載ミリ波レーダまで、多くの計測システムにおいて、研究開発から技術営業まで幅広くこなした経験がある。
当研究室と企業の共同研究では①「顧客ニーズ」オリエンテッド、②「構想・システム設計」重視のものづくりを方針としている。
①は、顧客ニーズを引き出し、共に要求仕様を策定した上で、最適な技術を共に考えることを重要視する。既存研究成果をあてはめるのではない。今後、日本の産業界に求められる「ものづくり」は、より複雑化・多様化していくと思われる。これに対応するには、回路設計などの個々の要素技術のみならず「構想段階の設計」がコスト競争力を含めた成否全体を大きく左右する。
②は、この構想・システム設計を重視した共同研究を指向することである。ベンチマークを行い、当方の売りを定め、いわゆる設計に入る前にシミュレーションにより詳細な技術的フィージビリティスタディを実施する。このように、企業在籍時代の経験も活かして、共同研究を推進したい。

レーダ計測信号からアクセル・ブレーキ・ハンドルを制御可能な衝突回避・自動運転試験車両
鉄道安全監視システム

今後の展開

車載レーダを進化させ、その他の計測装置やセキュリティシステムへ応用したい

多周波ステップCPCミリ波レーダ

今後としては、車載レーダの研究を引き続き行い、車載レーダの普及に貢献していきたい。
現在の車載レーダは、移動体通信で言えば、第1世代に相当するものだ。移動体通信は、アナログFDMAから始まって、第3世代のCDMA、さらにはWiMAXのOFDM(直交波周波数分割多重)に至るまで日々進化している。同様にレーダにおいても、多機能化、高性能化、他センサとの融合が求められていくものと思われ、適宜最適な方式へと進化させていきたい。
計測技術は、一般社会生活のより多くの場面で応用される。
例えば、安全・安心のための応用として、「鉄道用レーダ」「踏切監視用レーダ」「交通流量計測センサ」「ホーム転落検知センサ」「機械式駐車場安全モニタ」「バス車内・周囲安全モニタ」「重要施設侵入監視センサ」、また社会資本の高齢化対策としての、「ビル・橋梁・プラント等非破壊検査」「シロアリ検知非破壊検査レーダ」、医療応用として「非接触呼吸・心拍計測」、更に社会的にも関心の高い「災害時の広域生存者捜索レーダ」などへの応用が期待される。
これらの応用では、ミリ波やマイクロ波を用いたレーダは、他のセンサと比べ、昼・夜、雨・霧・逆光、泥付着などの悪条件下での検知性能が高い、直接速度計測可能、エリア検知可能、検知距離が長いという特性が活かされている。
また、今後、制御技術とレーダ技術との融合を図り、車の自律自動運転(ロボットカー)社会の実現へ向け研究・開発を進めたい。
稲葉は、長年DBF(デジタルビームフォーミング)アンテナの技術を研究してきた。これをネットワーク化したマルチセンサ技術(情報ではなく信号レベルで融合するMIMOレーダ)へと発展させ、応用範囲を広げていきたい。

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