産総研連携研究室
江上 周作 連携准教授
- 所属:国立研究開発法人産業技術総合研究所
- メールアドレス:s-egami@aist.go.jp
- ウェブサイト: https://researchmap.jp/s-egami
研究目的
情報基盤技術の発展により多種多様な事物がデータ化されており、この増大するデータは人工知能(AI)や情報システムにおいて貴重な資源となっています。これらの大量かつ多様なデータをAIや情報システムから効率的に活用するためには、データの「意味(セマンティクス)」や「文脈(コンテキスト)」を正しく抽出し、構造化し、体系化する技術が必要不可欠です。データを解釈することで情報となり、情報を整理し体系化することで知識として昇華されます。あらゆるデータが知識構造化されたサイバー空間を構築することで現在のウェブやAIを高度化し、実世界の課題解決に応用することを目的としています。
具体的な研究内容
データ同士の関係性をグラフネットワークにより表現する知識グラフ(ナレッジグラフ)や、そのウェブ標準であるLinked Data等のセマンティックウェブ技術を軸として、知識表現、機械学習、自然言語処理技術等を組み合わせた様々な研究を進めています(図1)。
- 図1.主な研究内容
Linked Dataの構築と活用
行政データ、ウェブ記事、SNS、センサデータ等から知識グラフを自動構築し、Linked Open Data(LOD)としてオープンデータ化し、これを利活用することで社会課題解決を支援する公共性の高い研究に取り組んでいます。(例[1][2])
知識の構造化と推論
特定領域における専門知識や、異なる領域に共通する抽象的知識を構造化したオントロジーを構築し、異種情報システムにおける相互運用性の向上や、推論による検索の効率化などに応用する研究に取り組んでいます。(例[1][3][4])
知識グラフの機械学習応用
知識グラフの分散表現学習(ベクトル空間への埋め込み)により、分類、クラスタリング、予測、推薦などの機械学習タスクへ応用する研究に取り組んでいます。(例[5][6][7])
出力の根拠を説明できるAIシステム
判断に至った理由や根拠を論理的に説明できるAIシステムに関する研究に取り組んでいます(例[5][7])。このタスクのための知識グラフを構築して提供し、「ナレッジグラフ推論チャレンジ」を開催しています[8]。
- (新しいウィンドウが開きます)ナレッジグラフ推論チャレンジ
- (新しいウィンドウが開きます)ナレッジグラフ推論チャレンジ【実社会版】2022
教員からのメッセージ
本学では大須賀・田原・清研究室と連携しています。配属される学生さんは必要であれば技術研修として産総研人工知能研究センター(お台場)の環境やAI向け大規模計算インフラ(ABCI)が利用可能です。知能情報学やウェブ情報学に興味のある学生さんと一緒に研究活動ができることを楽しみにしています。ぜひ気軽にご相談ください。
参考文献・参考実装
[1] Shusaku Egami, et al.: Detecting Vicious Cycles in Urban Problem Knowledge Graph using Inference Rules, Data Intelligence, Vol.4, No.1, pp.88-111, 2022
https://doi.org/10.1162/dint_a_00113
[2] 江上,他.放置自転車問題解決に向けた循環型LOD構築システムの提案,人工知能学会論文誌, Vol.31, No.6, pp.AI30-K_1-12, 2016
https://doi.org/10.1527/tjsai.AI30-K
[3] 江上,他.航空交通管理における意味的な相互運用性のためのオントロジーの構築と応用, 人工知能学会論文誌, Vol.36, No.1, pp.WI2-F_1-12, 2021
https://doi.org/10.1527/tjsai.36-1_WI2-F
[4] Shusaku Egami, et al.: CIRO: COVID-19 Infection Risk Ontology, PLOS ONE, Vol.18, No.3: e0282291, 2023
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0282291
[5] Shusaku Egami, et al.: Synthesizing Event-centric Knowledge Graphs of Daily Activities using Virtual Space, IEEE Access, Vol.11, pp.23857-23873, 2023
https://doi.org/10.1109/ACCESS.2023.3253807
[6] Shusaku Egami, et al.: Predicting Urban Problems: A Comparison of Graph-based and Image-based Methods, Workshop and Poster Proceedings of the 8th Joint International Semantic Technology Conference (JIST2018), pp.114-117, 2018
http://ceur-ws.org/Vol-2293/jist2018pd_paper10.pdf
[7] 勝島,他.グラフ畳み込みネットワークを用いた推理小説の犯人推定とその根拠の解釈,人工知能学会第二種研究会資料, SIG-SWO-056-17, 2022
https://doi.org/10.11517/jsaisigtwo.2022.SWO-056_17
[8] 川村,他.第1回ナレッジグラフ推論チャレンジ 2018開催報告, 人工知能学会誌,Vol.34, No.3, pp.396-412, 2019
https://doi.org/10.11517/jjsai.34.3_396